感圧性接着剤の特許明細書をまとめました

レバレッジ翻訳講座の接着剤の特許明細書を扱ったビデオ講座を視聴して、接着剤に興味を持ち、早速他の明細書をいくつか読んでみました。

そのうちの1つの特許明細書の内容をここに紹介したいと思います。

私が疑問に思った用語の意味も、都度調べて書きました。

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テーマは、ホットメルト加工可能なアクリレート感圧性接着剤の調製方法です。

 ➡ 感圧性接着剤とは
・強度の粘着力がある
・指圧以下の力で接着できる
・被着体同士が接着している状態を維持できる
・被着体からきれいに剥がすことができる
上記の粘着力、引きはがし接着力を実現するを達成するために、粘弾特性を持つ材料を使用する必要があり、この明細書では、エラストマー(メタ)アクリレートを使用しています。
*感圧性接着剤は、一部の本やサイト、明細書では「粘着剤」という用語で表現されています。基本的には同じものを指しています。

◎この発明の背景

各種溶剤を含む溶液形態の感圧性接着剤は、下記のような問題がありました。

・製造時  溶剤除去という追加の設備と工程が必要になり、それが接着剤のコスト高につながる。(しかし溶剤がすべて除去されるわけではない)

・運搬時  溶剤が入っているため、その分重量が重くなり、それがコスト高につながる

・使用時  一部の溶剤はどうしても空気中に放出されるので、環境への懸念がある

◎解決策はあったもののまた問題が発生

溶剤を使用しない固体のホットメルト系感圧性接着剤を開発しました。溶剤にまつわる問題はなくなったものの、今度は肝心の接着の機能に問題が。。。溶剤系の接着剤と同じような機能が実現しなかったのです。それは、製造方法の関係から、ポリマーの分子量が制限されること。それが接着力のせん断性に影響を及ぼしました。

➡ ホットメルト系接着剤
常温では固体ですが、加熱すると液体になる接着剤です。その状態で被着体に塗布し、冷却すると固体に変化し、接着完了となります。

せん断力
物体の内部または外部のある断面に対して平行に、お互いに逆方向に加えられる力。

◎この特許明細書で提示された解決策

溶剤は使わない、しかし、高い接着性を維持するために提示された解決策を以下に示します。

・比較的高濃度な粘着付与剤を追加する

・接着剤の材料であるエラストマー(メタ)アクリレートランダムコポリマーの分岐化と分子量制御を行う

・エラストマー(メタ)アクリレートランダムコポリマーマトリックスをホットメルト加工後に架橋する

 ➡ 粘着付与剤
主成分が粘着性に欠けるときに添加されます。この明細書では、フェノール系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、合成炭化水素樹脂などが取り上げられています。

➡ エラストマー
ゴム弾性をもつ高分子です。
 ➡ (メタ)アクリレート
明細書では、「アルコールのモノマー性アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステル」と定義しています。
アクリル酸エステルとは、アクリル酸とアルコール(またはフェノール)から生成するエステルの総称。アクリル樹脂、繊維用のモノマーとして使用されます。
 ➡ ランダムコポリマー
明細書では、「少なくとも2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを指し、その場合、モノマーは、ランダムな分布でポリマー中に存在する」と定義しています。

◎接着剤の作製手順

明細書では、ホットメルト加工可能な感圧性接着剤の調製方法とその接着剤を使ったテープの作製方法、それから、接着力のテストとその結果をまとめています。

大まかな流れは以下の通りです。(ただし、いくつも実施形態があるので、下記に示すのはその一例です。)

◆準備

1.感圧性接着剤を作成するための混合装置の準備

2.プレ接着剤組成物の準備

3.粘着付与樹脂やその他の添加剤の準備

◆作製

4.上記「2」と「3」を「1」で混合

5.ホットメルトブレンド加工が完了し、架橋前の感圧性接着剤が完成

◆物品の作製

6.「5」でできた接着剤を利用したテープを作製

7.テープに紫外線を当てて、接着剤を架橋

◆接着力のテスト

8.作製されたテープを複数の方法でテストし、接着力を記録

◎各工程の詳細

各工程を詳しく見ていきます。

◆準備

1.感圧性接着剤を作成するための混合装置の準備

原材料を混合し、テープ物品を作成するための機器を準備します。下記の機器のいずれかになります。

・バッチ混合装置   1つ1つの作業を独立して行う装置

・連続混合装置    複数の作業を連続して行う装置

連続混合装置の例) 単軸押出成形機、二軸押出成形機、ディスク押出成形機、往復短軸押出成形機、ピンバレル単軸押出成形機

 ➡ 押出成形機
プラスチック成形機。溶融したプラスチック原料を金型から押し出して成型する機械。

2.プレ接着剤組成物の作製

プレ接着剤組成物を作製します。

(1)材料

・アクリレート系原材料

・コモノマー

重合開始剤

・分岐化剤

架橋

・添加剤(実施形態によって有り無し、またはその内訳が変わる)

 ➡ 重合とは
低分子化合物が結合して高分子化合物を生成するときの反応

 ➡ 架橋とは
鎖状構造で並んでいる高分子化合物の一部の分子同士を、橋を架けるよう結合させる反応。分子を網目状にすることによって、物質の性質が変化します。

(2)作製手順

1.上記(1)の原材料を準備する

2.パッケージ材を準備して、(1)を充填し、封止する。後で接着剤を作成するとき、パッケージ材も含めて混合するので、接着剤作製に悪影響を与えないパッケージ材を選択する

3.「2」のパッケージに透過性エネルギーを当てて、重合させる。熱重合でもよいが、通常は紫外線を当てる光重合を行う。

4.プレ接着剤組成物が完成。*この時点ではまだ架橋は行われない。

3.粘着付与樹脂の準備

市販の粘着付与樹脂2種類を用意します。

選択の条件は、1つの粘着付与剤のガラス転移温度が20℃、もう1つの粘着付与剤のガラス転移温度が0℃以下であること。

これで準備作業は完了です。

 ➡ ガラス転移温度
物質が変化するとき、例えば水が氷(固体)から水(液体)に変化するときの温度を「融点」といいます。しかし、固体から液体に変化する前にゴム状態になる物質があります。このゴム状態に変化する温度を、ガラス転移温度といいます。

4.上記「2」と「3」を「1」で混合

プレ接着剤組成物と粘着付与剤を「1」で示した混合装置に入れ、混ぜ合わせます。混合装置に、パウチに入ったプレ接着剤組成物を入れ、その後粘着付与剤を入れ、混合します。実施形態によっては各種添加剤を投入します。(パウチ内に添加剤が含まれていることもあり)

この時の押出機内の温度はだいたい150℃~200℃の間です。この中で、投入された材料は溶融されて、押出機からホットメルトブレンドが作製されます。

5.ホットメルトブレンド加工が完了し、架橋前の感圧性接着剤が完成

感圧性接着剤が完成しますが、まだ処理は終了していません。

6.「5」でできた接着剤を利用したテープを作製

押出機から出てきた溶融状態の感圧性接着剤を基材にコーティングし、テープを作成します。

7.テープに紫外線を当てて、接着剤を架橋

実施形態によっては架橋をしないものもあり。

8.作製されたテープを複数の方法でテストし、接着力を記録

ホットメルト加工可能な感圧性接着剤をコーティングしたテープが完成しました。

接着強度のテストを行います。

テスト内容

(1)せん断強度

テープにかけられた静荷重に対して、テープの接着力の保持時間を測定するテストです。

①ステンレス鋼パネル(SSパネル)を左図のように固定し、そこに試験片であるテープを貼ります。

②その試験片の下におもりをぶら下げて、23℃及び50%の相対湿度を保った部屋に置き、試験片がパネルから剥がれて落ちるまでの時間を測定します。

(2)ローリングボールタック

粘着力(べたつき)を測定するテストです。

真ん中にボールの通路を作った傾斜型の試験機を使用します。傾斜が終わった下の部分に試験片であるテープを貼り、上から転がしたボールがそのテープの粘着部分に触れて止まった距離を測定します。

(3)ガラスに対する180°剥離試験

ガラスに貼り付けた試験片であるテープを、一定の負荷速度をかけて180度の角度で剥がし、破壊モードと、接着力(単位:N/dm)を測定しました。

①ガラスに試験片を張り付けて23℃及び50%の相対湿度を保った部屋で15分間滞留します。

②180°剥離試験機にかけて、一定の負荷速度で試験片をはがし、破壊状況と接着力を記録します。

破壊状況は下記を確認します。

・接着剤と基材の間である界面部分が破壊された界面破壊

・界面破壊であるが、基材に接着剤に残留物がある

・接着剤の部分が破壊されている凝集破壊

(4)高密度ポリエチレンに対する90°剥離試験

高密度ポリエチレンに貼り付けた試験片であるテープを一定の負荷速度をかけて90度の角度で剥がし、破壊モードと、接着力(単位:N/dm)を測定しました。

①高密度ポリエチレンに試験片を張り付けて23℃及び50%の相対湿度を保った部屋で15分間滞留します。

②90°剥離試験機にかけて、一定の負荷速度で試験片をはがし、破壊状況と接着力を記録します。

◎この特許明細書を読んで

この特許明細書に提示された解決策がなぜ、粘着強度につながるのかを私なりに調べてみました。接着強度を向上するための解決策は下記のとおりです。

・粘着付与剤の追加
・エラストマー(メタ)アクリレートランダムコポリマーの分岐化と分子量の増大
・エラストマー(メタ)アクリレートランダムコポリマーの架橋

この中で、なぜ原材料のポリマーの分岐化と分子量増大をすすめるのか、なぜ架橋をするのかを考えました。

分岐化を進めることで、分子量が増えます。また重合によっても分子量が増えます。このように分子量を増やすのは、分子間力の1つであるファンデルワールス力を強くするためだと考えました。
分子量を増やすと、ファンデルワールス力も強くなります。接着のしくみには、このファンデルワールス力が密接にかかわっていて、この力が大きくなると接着力も強くなると考えられています。なので、
分子量を増やす→ファンデルワールス力が強くなる→接着強度が向上する
と考えました。

アクリル系の接着剤への架橋の効果は、架橋することでやはり分子量が増える、又は弾力が増えるので接着強度が上がると考えました。

今回疑問に思ったことは、ガラス転移温度についてです。粘着付与剤で、ガラス転移温度が異なる2種類を使用するとありましたが、この理由がわかりませんでした。これを宿題にしたいと思います。

*参考資料

化学便覧 応用化学編 第5版
標準化学用語辞典 第2版
化学辞典 (東京化学同人)
身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ 接着剤(家庭用)
Wikipedia

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