接着とはどのような状態か

今回は接着という状態について書いてみたいと思います。
そもそも、ものとものはなぜくっつくのでしょうか。
接着している状態とはどのようなものなのでしょうか。

◎「接着」の原理

JIS K6800(接着剤・接着用語)の規定によると、

「接着」とは、

接着剤を媒介とし,化学的若しくは物理的な力又はその両者によって二つの面が結合した状態

だそうです。

化学的若しくは物理的な力…とはどのようなものか、を調べてみました。

その代表的な3つの力を紹介します。

1.化学的相互作用(一次結合力)

2.物理的相互作用(二次結合力)

3.機械的結合

◎化学的相互作用(一次結合力)

接着剤に含まれる物質と被着体に含まれる物質との間に化学反応が起こり、共有結合又は配位結合が成立。その力によって接着剤と被着体が結合するというものです。

◎物理的相互作用(二次結合力)

接着剤と被着体が接する表面にある分子同士が、分子間力という引力で引きあって結合するというものです。

代表的な分子間力として、ファンデルワールス力、水素結合やイオン結合などがあります。

分子間力が発揮されるためには、分子同士が密着するほど近づかなければなりません。そのためには、「濡れた状態」が必要になります。

液体である接着剤が、固体である被着体を濡らし、接着剤と被着体がぴったりと密着。そこに分子間力が働き、接着するのです。

*濡れ性は水接触角の測定で評価されます。接触角が小さいほど、濡れ性がよい状態です。

◎機械的結合

機械的結合は、被着材の細かい凹凸の中に接着剤が入り込むことで、接着剤がアンカーのような役割をするというものです。

例えば、被着材の表面が、目視では滑らかでも、ミクロ的にはギザギザしていることがあります。そんなギザギザの間に接着剤が入り込むことで、しっかりとくっつく力を発揮するのです。

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接着にかかわる結合について紹介しましたが、実際は上記1つだけの力がかかわっていることではなく、これらが複雑に絡み合って接着という状態を作り出しています。

また、意外なことですが、まだ接着のしくみには謎が多いそうです。今後新しい「発見」があるのではないかと楽しみです。

◎化学結合と分子間力をもっと詳しく

接着には、さまざまな結合や分子間力が関わっていることがわかりました。この結合や分子間力をもう少し詳しく書いてみたいと思います。

1.共有結合とは

電子を共有する結合です。
たとえば、水素Hの場合、原子は、原子核と、その周りに1つの電子が存在する軌道から構成されています。そのH原子同士が近づくと、軌道が重なって、H2という水素分子ができます。この水素同士の結合を共有結合といいます。

水分子、窒素分子、アンモニアなども共有結合で成り立っています。

2.配位結合とは

共有結合は、結合する原子が電子を出し合って結合しましたが、配位結合は、どちらか一方だけが電子を持った状態で結合します。

たとえば、アンモニア(NH3)の場合、Nの3つの電子はHと共有結合状態にあります。あと2つの電子が非共有電子対になっています。ここで、H+と出会うと、そこで結合が成立。NH4+というアンモニアイオンとなります。

※非共有電子対とは、最外殻にある電子で共有結合に関係していない電子対のことを言います。孤立電子対ともいいます。

左図は電子式です。+は水素が持っている+イオンです。結合が成立すると、見た目(?)は、電子を共有しあう共有結合と変わりません。

3.分子間力とは

分子間力とは分子同士に働く力です。ファンデルワールス力、水素結合やイオン結合などがあります。

3-1.ファンデルワールス力

分子間に働くクーロン力で、分子の極性により3種類あります。また、ファンデルワールス力が発生するには、分子同士が接近していないといけません。

3-1-1 極性分子同士の時

分子は電荷的には中性ですが、部分的に電荷の隔たりがある分子と隔たりがない分子が存在します。電荷的に隔たりがある分子を極性分子といいます。互いに極性があるので、「+」と「-」で引き合うクーロン力が発生します。この状態を双極子-双極子相互作用といいます。

※双極子とは、同じ電荷をもつ+と-の電荷のことです。同じ電荷なので、+と-が打ち消しあって中性のはずですが、電荷の隔たりがあるために極性分子となります。

3-1-2 極性分子と無極性分子の時

電荷の隔たりがない分子を無極性分子といいます。電荷の隔たりがないんだから、クーロン力は発生しないんじゃない?と思うかもしれませんが、無極性分子に極性分子が近づくと、極性分子の電荷の隔たりに影響を受けて、無極性分子にまで電荷の隔たりが、、、。その結果、クーロン力が発生するのです。

3-1-3 無極性分子同士の時

どちらも無極性で、誘惑(?)する分子がないのだから、今度こそクーロン力は発生するまいと思うかもしれませんが、、、ところが、やっぱり発生するのです。電子は常に超高速で動き回っているので、瞬間的に電荷の隔たりができます! 分子同士のその「瞬間」が一致すると、そこで、「+」「-」が引き合い、クーロン力が発生するというわけです。この力を「ロンドン分散力」とも言います。

🙂 無極性分子同士の出会い(?)の仕組みを知ったとき、「犬も歩けば棒に当たる」ということわざを思い出してしまいました(^^;)。動き回る(行動する)といろんな出会いがあるものです。人間も分子も同じなのかな。。。

※電荷的に中性なのに、なぜ極性があったり、なかったりするのでしょうか。
それは、結合している原子の電気陰性度の違いによるものです。電気陰性度が同じ原子同士が結合している分子や、電気陰性度が異なっていても互いに打ち消しあっている分子は無極性です。
しかし、電気陰性度に差があるもの同士が結合すると、電気陰性度の大きい原子が相手の共有電子対を強く引き付けるので、電荷の隔たりが発生し、極性を持つ分子になるのです。
例えば、水分子(H2O)の場合、酸素Oは水素Hより電気陰性度が大きいため、酸素Oが水素Hの電子を引っ張り、その結果電荷の隔たりが生じて、酸素は-に、水素は+の電荷を帯びるようになります。

※ファインデルワールス力が大きくなるポイントは2つです。
1つめは分子自体が大きいこと。このクーロン力は電子の動きによって生まれるので、電子が動きやすい環境のほうが有利です。電子が動きやすい環境とは、原子核から遠いこと。つまり大きい分子であれば、原子核からの距離が長くなるので、電子はより自由に動き回ることができ、他の電子との出会いも増え、そしてクーロン力も大きくなるのです。
2つめのポイントは、分子の数が多い(分子量が大きい)こと。電子同士で生まれるクーロン力なので、その電子の数が増えれば増えるほど当然クーロン力も大きくなります。これは、接着剤のくっつく力にも影響します。

3-2.水素結合

名前の通り、この結合のキーとなるのが「水素」です。
水素結合の代表的なものは、酸素(O)と結びついた水(H2O)です。
水素原子2つと酸素原子1つは共有結合で水分子になりますが、水分子同士のつながりは水素結合です。

水分子は、上にも書いたように水素は+に、酸素は-に電荷の隔たりがある極性分子です。この水分子が集合すると、-の電荷を帯びている酸素が他の水分子の水素を引き寄せて結合します。これを水素結合といいます。

水素結合は、水素が、電気陰性度の大きいフッ素F、窒素N、そして酸素Oと結合したときに成立します。

3-3.イオン結合

電子を外部に放出したほうが安定できる物質と、電子を外部から受け取ったほうが安定できる物質が、それぞれの電子を授受し、クーロン力で結合することをイオン結合といいます。

イオン結合で取り上げられる代表的な物質といえば、塩化ナトリウム(NaCl)です。

ナトリウム原子(Na)が1つの電子を外部に放出したほうが安定できるのは、下記の図にあるように最外殻M殻に1つの電子があり、それがなくなるとL殻の軌道に8つの電子が納まり、原子が安定するからです。

一方塩素原子(Cl)は、最外殻M殻に7つの電子があります。これにもう1つの電子が加われば、8つの電子が構成されることになり、安定します。

というわけで、NaとClは、Na+とCl-というイオン状態になりやすいのです。そして、お互いに「+」と「-」を持っているので、クーロン力で結合し、NaClとなります。

◎結合の強さ

原子、分子は様々な方法で結合していることがわかりました。複数あると、「どの力が一番強いのかな?」とつい気になってしまいます。

結合の強さは、結合を引き離すのに必要なエネルギーで比較します。

一般に結合の強さは、以下の通りとされています。

共有結合(配位結合)>イオン結合>水素結合>ファンデルワールス力

しかし、同じ共有結合でも、単結合、二重結合、三重結合では、エネルギーの大きさが異なりますし、なかには、イオン結合で成立している物質のほうが、共有結合の物質より大きいエネルギーを持つものもあります。

また、共有結合、イオン結合という名前で結合を分けていますが、実は結合の性質は電気陰性度で変わっていきます。

電気陰性度の差がなければ、無極性共有結合ですが、電気陰性度の差があると、共有結合だけど、イオン結合の要素もあるね、という感じになり、ある一定の差(1.7)を超えると共有結合の要素がないわけではないけど、イオン結合といってよいという物質になります。つまり、共有結合とイオン結合は、「ここで、はっきり別の組です」と線を引けないのです。

結合エネルギーは、結合の形式で強さを比較しきれないいろいろな要素があるようです。

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原子や分子の結合、分子間力について書いてきましたが、まだまだ私の化学の知識は、よく言えば(^^;)発展途上、悪く言うと不完全な部分がたくさんあります。今後、もっと努力して、特許にかかわる役立つ内容を、書いていきたいと思います。

*参考資料

化学便覧 応用化学編 第5版
標準化学用語辞典 第2版
化学辞典 (東京化学同人)
身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ 接着剤(家庭用)
バイオ研究者がもっと知っておきたい化学①化学結合 齋藤勝裕著 羊土社
バイオ研究者が知っておきたい化学の必須知識 齋藤勝裕著 羊土社
岡野の化学が初歩からしっかり身につく 理論化学① 岡野雅司著 技術評論社
接着の化学 菅野照造・堀井真 監修 高性能接着研究会 編著 日刊工業新聞社
Wikipedia

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