「IBM社レジスト特許」で学ぶ半導体プロセス工程(2)

引き続き、「特開平6―95385 、深-UV、I-線またはE-ビームリソグラフ用の新規シリコン含有ネガレジスト」の明細書にある製造工程について、書いていきます。

今回は、図2の工程をまとめました。

図1の3層構造との大きな違い、それは2層構造であるということ。

3層を2層にするいうと、たった1つの層を減らすだけなので、そんなに違いはないのでは、と思うかもしれませんが、いえいえ、そんなことはありません。

1つの層を作り上げるまでには、(その層の役割にもよりますが)、塗布、乾燥、均一化、平たん化、チェックなど様々なステップをこなす必要があります。それをするための機器も必要で、人件費もかかります。また、ステップが増えることで、ごみが乗ったり、何らかの欠陥が起こるリスクもステップごとに増えていきます。

結局、それは製品の歩留まり、価格、信頼性に影響するので、層が1つ増える、減るということは半導体製造工程においては、とても重要なのです。

図2の2層構造は、1つの層を減らすためにどのような工夫をしたのでしょうか。

1.基板にポリマーを、その上にレジストを塗布

このポリマーは可溶化ポリイミドまたはハードベークしたノボラックです。その上にレジストを塗布します。

これで、2層構造は完成です。3層構造と異なるのは、RIEバリア層を形成していないことです。エッチングに対応する層がない状態です。

2.プリベーク

レジストの溶剤を蒸発させて、下層との密着性を高めます。

3.露光

フォトレジストにマスクを通して光を当て、パターニングします。

この時点では、まだ現像していないので、パターンは潜像状態です。

※この後で、露光後ベークPEB(Post exposure bake)をする場合もあります。目的は光の波の影響で不均一になったパターンの端を滑らかにするため。

4.シリル化

今回の2層構造の最大のハイライト(!)です。

露光したレジスト層にHMDSのガスをさらします。シリコン(ケイ素)を含有している化学物質(HMDS)のガスを満たした真空チャンバ内に、基板を入れて、そのガスにさらします。ここでは、露光部、未露光部全体がHMDSのガスにさらされることになります。

その結果、レジスト層に気体であるHMDSが吸収されます。つまりレジスト層にシリコンが導入され、レジスト層の物質が変化し、耐エッチ性が向上しました。

※HMDSとは

HMDSはヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)の略で、構造式は以下の通り。ケイ素-窒素結合を有しています。

半導体製造の前工程では、今回のようにシリル化剤として物質をシリル化したり、シリコンウェハの表面に塗布して疎水化し、レジストとの密着性を向上したりするのに使用します。

5.現像

現像液に付けたり、上からシャワーのように現像液を塗布して、現像します。すると、未露光部分が溶解して除去されます。

6.リンス

現像液が残っていると現像が進んでしまい、除去される部分が増えてしまうので、リンス用の溶剤で残った現像液を洗浄します。

※レジスト膜が厚いものだったらどうなるか

レジスト膜を薄くする理由を前回のブログで書きましたが、もしレジスト膜が厚くて、全体が均一に露光されなかったらどうなるでしょう。

レジスト膜はUV光によって架橋し、現像液に対して不溶になりるため、上記の絵のように露光部分が残ります。しかし、光が十分に行き渡っていない部分があると、架橋反応も途中までになってしまいます。その結果、現像液がその部分にしみこんだり、レジスト膜と下のポリマー層との間に入り込んだりして、レジスト膜が膨潤することもありえるのです。

下記の図は、現像後のイメージです。左側はレジスト全体が架橋されてしっかりポリマー層に密着しています。右側は架橋されなかった部分が膨潤して、隣のラインと合体しそうになっています。膨潤後、リンス溶剤をつけると、今度はその部分が収縮します。形がある程度元に戻ることもありますが、ラインとラインの一部がくっついたままになり、ブリッジができることもあります。

 

7.ポストベーク

レジストを硬化させます。残っていた溶媒や現像液もここで除去し、下層との密着を強めます。

8.反応性イオンエッチング(RIE)

ここでは、O2のエッチングのみ行います。

シリル化で導入されたシリコンがO2を受けることで、SiO2になります。これが耐エッチ性を発揮。レジスト層はエッチングに耐えることができます。その間にポリマーがエッチングされていきます。

9.アンダーカット

エッチングされたポリマー層と残ったレジストの側面をアンダーカットします。この後、金属を上から蒸着させるのですが、金属が側面についてしまうことを防ぐためです。

10.金属を蒸着

金属をCVD(化学気相成長法)や他の方法でウェハ上に付着させ、金属膜を形成します。図では上から雪のように金属が降っていますが、上にウェハを持ってきて、下から金属を付着させるものもあります。(その方法の場合、ウェハにごみが乗りません)。

その結果、金属の全面被覆層(ブランケット層)ができます。

11.残った層を溶剤で溶かして除去(リフトオフ)

残った層を溶剤で除去して、金属膜だけを残します。溶剤で溶かす方法としては、溶剤につけたり、上からかけるスプレー方式などがあります。

2層構造の前工程はこれで完了です。

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