CMPで使用する研磨組成物に関する特許明細書

CMP(化学機械平坦化)で使用する研磨組成物に関する特許明細書を紹介します。

化学機械平坦化とは、研磨剤(スラリー)を用いて、ウェハの表面に化学反応を起こしつつ、研磨剤の粒子によって機械的にウェハの表面を研磨し、平坦化するというものです。

半導体製造工程では多層化が進んでいますが、何層もの回路や絶縁膜などを形成するときに重要なのが、その層を平坦化することです。※平坦化が重要な理由はこちらをどうぞ。

この特許明細書では、平坦化するための研磨組成物とその方法に関する発明を扱っています。

タイトルは「元素状ケイ素を含む膜の化学機械平坦化」

元素状ケイ素を含む膜やそれ以外の膜を同時に化学機械平坦化することができ、膜ごとの除去速度選択比を制御できる研磨組成物とその方法を提供することがテーマです。

この「元素状ケイ素」は、明細書の中で「他の元素との化学結合が実質的になく、多結晶質(ポリSiと表記)、アモリファスシリコン(a-Siと表記)又は単結晶などの結晶形態のケイ素を含む」と定義されています。

◎背景

これまでの特許明細書には、元素状ケイ素を含む膜の除去作度を高めるため、または他の膜に対する除去速度選択比を高めるための数々の化合物が開示されています。

◎課題

元素状ケイ素を含む膜とケイ素化合物を含む膜を同時に除去するときの、除去速度選択比を制御できる研磨組成物が求められています。

単に除去速度を早くしたり、遅くしたりするだけでなく、状況に応じて、どちらか一方の膜の除去を早めたり、同じにしたり、遅くしたりする研磨組成物の発明が課題です。

◎解決策

元素状ケイ素を含む膜とケイ素化合物を含む膜の除去速度選択比を制御できる研磨組成物と研磨する方法を提供することです。

簡単にまとめると以下のようになります。※下記に示すのはごく一部です。

・研磨組成物の提供
1.研磨剤粒子
シリカ、アルミナ、酸化セリウム、セリア―シリカ複合粒子など

2.元素状ケイ素を含む膜の除去速度を高める化合物
硫黄若しくは窒素、又はその両方を含みカルボニル基を含む複素環式炭素化合物
硫黄若しくは窒素、又はその両方を含む複素環式炭素化合物
アルデヒド又はケトン化合物

3.液体キャリア 

4.添加剤
アクリル酸基を含むポリマー、又はコポリマーなど
pH調整剤又はpH緩衝剤
界面活性剤 など

・上記組成物を使った研磨方法の提供

※この研磨組成物をどんなときに使用するか
素子分離法(Shallow Trench Isolation)(STI)、層間誘電体(ILD)、金属間誘電体(IMD)、シリコン貫通ビア(TSV)およびベアウエハを研磨するとき

◎実施例

特許明細書には、研磨される膜の種類、研磨組成物の種類が数多く挙げられていますが、ここでは、実施例に取り上げられたものを紹介します。※量と方法は省略します。

研磨される膜
ポリSi膜(元素状ケイ素を含む膜)
TEOS膜(酸化ケイ素を含む膜)
SiN膜(窒化ケイ素を含む膜)

研磨組成物

1.研磨剤粒子
シリカ粒子
セリアコートシリカ粒子(セリアでコーティングされたシリカ粒子)
焼成セリア粒子(セリア粒子は酸化ケイ素膜の除去速度を高める)

2.化合物
メチルイソチアゾリノン(元素状ケイ素を含む膜の除去速度を高める)

※メチルイソチアゾリノンの構造式

3.水

4.各種添加剤
ポリアクリル酸アンモニウム
pH調整剤

上記組成物を使用して、上記3つの膜の除去速度、TEOS膜に対するポリSi膜の除去速度選択比、SiN膜に対するポリSi膜の除去速度選択比の値を確認しました。

結果は以下の通りです。※それぞれの物質の含まれる割合によって結果は変わります。

 ➡ シリカ粒子とメチルイソチアゾリノン、ポリアクリル酸アンモニウムを使用したとき
→ポリSi膜の除去速度が高まり、TEOS膜、SiN膜の除去速度が低く抑えられた。ポリSi膜の除去速度選択比が高まった

 ➡ セリアコートシリカ粒子とメチルイソチアゾリノン、ポリアクリル酸アンモニウムを使用したとき
→ポリSi膜、TEOS膜両方の除去速度が高まった。TEOS膜の速度のほうが高かったため、ポリSi膜の除去速度選択比が1以下になった。

 ➡ ポリアクリル酸アンモニウムの使用量を調整したとき
→TEOS膜の除去速度を調整することができた

 ➡ 焼成セリア粒子とメチルイソチアゾリノン、ポリアクリル酸アンモニウムを使用したとき
→ポリSi膜とTEOS膜の除去速度がほぼ同じになった

 ➡ pH調整剤(ここでは水酸化アンモニウム)でpHを上げたとき
→TEOS膜、SiN膜に大きな変化はなかったが、ポリSi膜の除去速度が上がった。つまりポリSi除去速度選択比も2つの膜に対して上がった

 ➡ シリカ粒子、セリアコートシリカ粒子とメチルイソチアゾリノン、ポリアクリル酸アンモニウムを使用したとき
→SiN膜に対して、ポリSi膜の除去速度が高まり、除去速度選択比も上がった。

◎実施例の結果からわかること

シリカ粒子、メチルイソチアゾリノンはポリSi膜の除去速度を高める

セリア粒子が含まれる研磨組成物はTEOS膜の除去速度を高める

ポリアクリル酸アンモニウムはTEOS膜の除去速度を調整する

セリアコートシリカ粒子は、ポリSi膜、TEOS膜の両方の除去速度を高める

pH値が膜の除去速度に影響を与える

除去速度選択比も研磨組成物の割合によって、かなりの幅が生じます。この選択比を生かして、様々な場面で的確に膜を研磨するのに有用であるといえます。

◎なぜ膜によって除去速度を変える必要があるのか

この明細書では具体的な理由は書かれていませんでしたが、STI(Shallow Trench Isolation)形成時の酸化膜と窒化膜を例にして説明します。

STIの形成は以下の順番で行なわれます。

1.シリコン基板に酸化膜、その上に窒化膜を形成

2.その上にレジストを塗布してパターニング

3.エッチング

4.基板全体に厚い酸化膜を堆積させ、エッチングでできた溝を埋める

この状態の基板は溝があるところ、ないところがあるので、表面が凸凹になっています。

5.平坦化処理

「4」で塗布した厚い酸化膜を研磨して平坦化処理をします。ここでは、「4」の酸化膜を高速で研磨しつつも「1」で形成した窒化膜を残す必要があります。

このとき必要なのが2つの膜の除去速度選択比が異なる研磨組成物です。「4」の酸化膜は高速で除去するが、窒化膜の除去は抑える、つまり酸化膜の選択比が高い研磨組成物を使って平坦化処理を行います。